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たとえばね、
それを僕はすごく愛おしいと思ったの。
なんて言ったらいいのかな、僕は馬鹿だから、そんなことも分からないの。
たくさんある大事な言葉のうちの、ひとつも、ひとつも確実に誰かに伝える事が出来ないの。
「だいすき」も「だいきらい」もそう言ってしまうのは簡単で、ふっとすれば確かにそれは音として響くのだけれど。
「だいすき」それは言葉にした瞬間ひどく安く聞こえてしまう。
ねえ、ねえ、その大好きはどういう大好き?
ひどく脆くて、とても難しかった。
音として表現することは、とても、とても難しかった。
でもね、
確かにそれを僕は、愛おしいと思ったのだよ。
音に出来ないもどかしさも、喉の奥でつっかえてしまうことの歯がゆさも、
それでもね、きみが、あなたたちが、僕の頭を軽く撫でてくれるだけで、確かにそれは僕に伝わっていくの。
あたたかくて、くすぐったくて、しあわせの気持ち。
ふわりと、真白のキャンパスに、ほわりと暖色の絵の具が染み込むよう。
非常にもどかしいけれども、この世界を愛おしいと、確かに僕は思った。
恨んだり、妬んだり、嫌ったり怒ったり、それでもね、ぜんぶそれは愛おしい、と、思った。
僕のことを嫌いと99思う人が居ても、僕の事を99好きでいてくれる人も、いるんだよ。
その手はね、瞳はね、僕を呼ぶその声はね、
そう、それは白い雪を紅く染めるように。
心に、あたたかくそれは灯る。
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風と共に、風と共に、流れて溶けるように、消えてしまうように、
風化していくのは、
どの感情だったっけ、大好きだっけ、悲しいだっけ、悔しい、それとも、嬉しい?
気付くのが少し、遅すぎた。
もう少し、早く気付けたら、僕は、もっと優しくなれたのかな。
誰も傷付けないで、誰も悲しませないように、優しくなれたのかな。
あたたかいしあわせなんて、とっくの昔に忘れたわ。
幸せな家庭なんて、いつだってテレビの中のお話。
願っても、叶わない。
縋ったって、離れてゆく。
叫んだって、聞こえちゃいない。
縋って、悲しくて苦しくて、「おかあさん」、伸ばした手は払われて、。
それでも、確かに僕は母を愛していて、何時か愛してくれるって信じていて、悪いのは全部僕だなんて、ちいさなお子様のちっぽけな思想。
風化していく、時と共に、
大好きも、悲しいも、どんな絶望もいつか消えて、どんな幸福も、やっぱりいつか消えてゆく。
嗚呼、それでも、
消えない何かを信じたいと思うのは何故です、か?